「つながらない1時間」に、会社は何を失っているのか

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オフィスのインターネットが突然つながらなくなる。多くの会社が、一度は経験しているのではないでしょうか。数分で復旧すれば笑い話ですが、それが一時間、半日と続いたとき、社内で何が起きるのか。今回は、通信が止まるという事態を、コストという視点から眺めてみます。

「止まる」と、想像以上のものが止まる

かつてのオフィスであれば、ネットが使えなくても紙の資料と電話で仕事は回りました。しかし現在の業務は、そのほとんどが通信の上に乗っています。

メールの送受信、クラウド上のファイル共有、会計や販売管理のシステム、勤怠の打刻、オンライン会議、そして決済端末。加えて、電話そのものがインターネット回線を経由している会社も少なくありません。回線が止まった瞬間、これらが同時に使えなくなります。

つまり「ネットが止まる」というのは、一つの機能が使えなくなることではなく、業務のほぼ全部が一斉に手を止めるということです。

止まっている間、社員は何をしているか

現場で実際に起きるのは、こんな光景です。まず数人が「つながらない」と気づき、周囲に確認して回ります。ルーターの電源を入れ直し、他のパソコンでも同じかを試し、契約先を調べ、電話をかける。

この間、直接対応している人だけでなく、待っている人の作業も止まっています。従業員が二十名いる会社で一時間の停止が起きれば、単純計算で二十時間分の稼働が失われることになります。人件費に換算すれば、決して小さな数字ではありません。

業種によって、痛みの出方が違う

同じ一時間でも、影響の出方は業種によって変わります。

店舗であれば、決済が止まった時点で売上そのものが立たなくなります。予約制のサービス業なら、来店されたお客様の情報が確認できません。制作や開発を行う会社では、クラウド上のデータにアクセスできず作業が完全に止まります。一方、外回りが中心の営業会社であれば、事務所が止まっていても現場は動き続けられるかもしれません。

自社にとっての「止まる」がどれくらい深刻なのかは、業務の構造によって違います。まずはそこを把握しておくことが、対策の優先度を決める材料になります。

目に見えにくい、二つ目のコスト

止まっている時間の損失は、まだ計算ができます。やっかいなのは、その後に残るものです。

外に対して生じる影響

お客様からの問い合わせに返信できない。予定していたオンライン商談に接続できない。店舗であれば、キャッシュレス決済が使えず、レジで待っていただくことになる。

こうした場面で失われるのは時間ではなく、信頼です。一度きりであれば「たまたま」で済みますが、繰り返されれば「あの会社は連絡がつきにくい」という印象が残ります。その影響は、売上のどこに表れたのか特定できないまま、じわじわと効いてきます。

復旧後に発生する遅れ

回線が戻っても、業務がすぐ元通りになるわけではありません。止まっていた間に溜まった処理を片づけ、遅れた分を取り戻す作業が待っています。

一時間の停止が、実際には半日分の遅れを生むということも珍しくありません。とくに締め日や繁忙期に重なった場合、その影響は翌週まで尾を引くこともあります。

「止まらないこと」より「早く戻せること」

こう書くと、絶対に止まらない回線を用意すべきだという話に聞こえるかもしれません。ですが、通信インフラである以上、機器の故障も、外部の工事による断線も、完全にゼロにはできません。

現実的に考えるべきなのは、止まる確率を下げることと同時に、止まったときにどれだけ早く戻せるかという点です。

復旧の速さを決めるのは「連絡してから」の時間

トラブル発生から復旧までの時間は、大きく二つに分かれます。異常に気づいて適切な窓口へ連絡するまでの時間と、連絡してから実際に直るまでの時間です。

前者は社内の準備次第で短縮できます。契約内容と連絡先をすぐ取り出せる場所にまとめておく、社内で誰が一次対応するかを決めておく。それだけで、初動は大きく変わります。

後者は、契約しているサービスの体制に左右されます。電話がつながる時間帯はいつまでか、現場に来てもらえる仕組みがあるか、機器の交換にどれくらいかかるか。この部分は、契約を選ぶ段階で決まってしまう要素です。

平常時にこそ、確認しておきたいこと

通信が止まってから慌てて調べ始めるのでは、それ自体が復旧を遅らせます。今つないでいる回線がどこの何なのか、サポートの受付時間は何時までか、緊急時はどこに連絡するのか。

こうした情報は、実は多くの会社で担当者一人の頭の中にしかありません。その人が不在の日にトラブルが起きたらどうなるか。想像してみると、共有しておくことの意味がはっきりします。

「そのうち直る」という判断が招くもの

現場でよく起きるのが、様子を見ようという判断です。一時的な不調かもしれないと考え、しばらく待ってみる。

その気持ちは自然なものですが、待っている間も損失は積み上がっています。何分待って改善しなければ連絡する、という基準をあらかじめ決めておくと、判断に迷う時間そのものをなくせます。単純なことですが、こうした社内ルールの有無が復旧時間に直結します。

見えないものに、どこまで投資するか

インターネット回線は、動いている限り誰も意識しない存在です。だからこそ、コストを削る対象として真っ先に候補に挙がることもあります。

けれど、止まった瞬間に会社のほぼすべてが停止するという性質を考えると、これは照明や空調と同じ、業務の土台にあたる設備です。土台を選ぶときの基準は、価格だけではないはずです。

一時間止まったら、自社では何が起きるのか。その想像を一度してみることが、回線を見直す最初の一歩になります。